蓮の栽培方法・育て方 京都花蓮研究会編

京 都  花 蓮 研 究 会

1. ハスを知ろう

 

(1) ハスとは

ハス科ハス属の植物で、オーストラリアなどの熱帯域から、インド、中国、日本などの温帯アジア、亜寒帯のロシア極東部、また、南北アメリカなどに分布しています。浮き葉と立ち葉を持ち、一般的には抽水性を示す大型の水生植物として扱われます。

世界には2種が知られています。主に紅や白の花を咲かせるアジア系のハス(Nelumbo nucifera)と、南北アメリカに分布し、黄色の花を咲かせるキバナハス(Nelumbo lutea)に大別されます。

アジア系のハスには紅・桃・爪紅・斑・白など、多数の花色がありますが、キバナハスは黄~淡黄色しかありません。両種の間には種間交雑品種が多く作出され、その花色により黄・白・黄紅の3つに分けられ、葉よりも高い位置で花を咲かせること、強健であることから優良な品種が多くみられます。

ハスは太古から人間と密接な関係にあり、人と共に移動してきた経緯を持つことから、特にアジア系のハスは原産地が不明であるとされています。近年、中国の黒龍江省やロシアの極東地域で、人間と全く関わりを持たないとされるハスの生育域が発見され、アジア系ハスの原種である可能性が高いとする見解があります。

 

(2) 用途による分類

 

1 レンコン(蓮根)用品種
レンコンを食用の目的で栽培する品種

2 花蓮
花を観賞の目的で栽培する品種

3 実蓮
実を食用の目的で栽培する品種

 

(3) 園芸的にみる分類

 

1 花と栽培容器のサイズによる分類

1. 大型品種
・花の直系が26cm以上になるもの
・80L以上の容器で育てないと、その品種特性が十分に発現されないもの
【適する容器の大きさ】 80L容器(用土の深さ20cm以上/水深15cm以上)

 

2. 中型品種
・花の直系が15cm以上、26cm未満のもの
・30L以上80L未満の容器で、支障なく花を咲かせ、その品種特性が十分に発現されるもの
【適する容器の大きさ】 65L容器(用土の深さ15cm以上/水深10cm以上)

 

3. 小型品種(茶椀蓮)
・花の直系が10cm以上、15cm未満のもの
・30L未満の容器で、支障なく花を咲かせるもの
【適する容器の大きさ】 30L容器(用土の深さ10cm以上/水深5cm以上)

 

4. 極小型品種(碗蓮など)
・花の直系が10cm未満のもの 
・1L前後の容器で、支障なく花を咲かせるもの
【適する容器の大きさ】 1L容器(用土の深さ5~7cm/水深3~5cm)
 ※但し、花後に6号以上に鉢ましを行うものとする

 

②花弁数による分類

1. 一重咲き
・花弁数が25枚未満のもの

2. 半八重咲き
・花弁数が25枚以上、50枚未満のもの

3. 八重咲き
・花弁数が50枚以上のもの

 

2. ハスを育てよう

 

池がなければ育てられないとあきらめてはいませんか? 水を溜めることのできる容器があれば、一般の家庭でも育てることができます。以下の点に注意して栽培すれば、美しい花を楽しむことができます。

 

(1) 容器

 

ハスは水生植物であるため、栽培には水を溜めることができる容器が必要になります。大型~中型品種は直接、栽培容器に植え付けますが、小~極小型品種は、土を入れて育てる容器(鉢)と、水を溜める容器の2つを用います。栽培容器が小さくなると、夏場には高温になりやすく、冬場には凍結するため、それらを緩和できる二重鉢で管理し、水を溜めた容器の中に栽培容器を沈めます。

 

(2) 用土

 

肥沃な田土(作土)が最適で、ハス栽培は用土で決まると言っても過言ではありません。良質な田土が入手できない場合は、次にあげるような配合土が代用できますので、参考にしてください。使用する際には、用土に水を加え、ホットケーキのタネより少し堅いくらいに練ってから使います。

 

例1) パーフェクト用土

荒木田土6、黒土2、熟成した腐葉土(5㎜ふるいに通したもの)2、腐植質主体の肥料(バイオゴールドオリジナル)適量配合後、少量の水を加え、最低3ヶ月程度の熟成が必要です。簡単にできる熟成方法は、厚手のビニール袋などに入れて保管します。その間、2~3回程度、袋から出して切り返し作業が必要となります。

蓮の土
時計回りに、荒木田土、黒土、篩でふるった腐葉土。  中央は元肥(バイオゴールドオリジナル)。


例2) すぐに使える用土

赤玉土小粒9、ケト土1に腐植質主体の肥料(バイオゴールドオリジナル)適量使用する際は水を加え、赤玉土の粒がなくなるくらいまでよく練ります。

 

(3) 植え替え

 

植え替えを行わないと株が混み合い、葉ばかりが茂って花が咲かなくなります。毎年、春の彼岸からサクラ‘ソメイヨシノ’が散る頃までに株分けを兼ねて植え替えましょう。種レンコンは3節に切り分け、1つの容器に1~2本の種レンコンを植え付けます。植え付けた種レンコンは、必ず萌芽するとは限らないので、残りのレンコンは予備として水に浮かべて残し、日なたで管理します。5月中・下旬になっても、萌芽がみられない場合は、土中で腐敗している可能性があるので、予備として残しておいたレンコンを植え直します。この際、予備レンコンからは浮き葉が出ているので、葉を水没させないように注意して植え付けましょう。

 

(4) 鉢まし

 

碗蓮など、5号鉢以下の小鉢(観賞鉢)で楽しんだ株は、花後(7月下旬~8月中旬)に根鉢を崩さないように注意して、元肥の入った用土で6~8号鉢に鉢ましを行います。鉢ましすることにより、再び花芽が出ることもあり、また、秋から肥大するレンコンの成長を促し、翌年の種レンコンを充実させるための大切な作業になります。

 

(5) 置き場所

 

終日、直射日光があたる場所で育てます。最低でも4時間以上、日が当たらないと花が咲かなくなるので、注意が必要です。キバナハスは、夏場の西日を嫌うので、西日が当たらない場所で栽培するか、西日に限り日除けを行います。

 

(6) 水やり

 

 水中にたくさんの酸素が溶け込むように、シャワーノズルを用いて灌水します。灌水は、水面の油膜状に浮遊する汚れを洗い流すように、水をあふれさせます。季節別の管理については、次のとおりです。

 

1 春の管理(4月~6月)

水温を高く保ち萌芽を促すため、昼間に水面上の汚れを洗い流すよう、4~5分の1程度の水が入れ替わるように水をあふれさせます。毎日、水量を確認しましょう。

 

2 夏の管理(7月~9月中旬)

葉の枚数が増えることに比例し、水を吸い上げる量が増え、また、梅雨が明けると水面からの蒸散が激しくなるため、朝夕の2回、3~4分の1程度の水が入れ替わるように、水をあふれさせながら補給します。また、夕方には夜温を下げるため、置き場所の周辺に打ち水を行い、葉水も合わせて行います。

 

3 秋の管理(9月下旬~11月上旬)

葉が黄変し、水を吸い上げる量も水面から蒸発する量も少なくなります。与える時間帯は特に気にする必要はありませんが、減った分の水を補給します。

 

4 冬の管理(11月中旬~3月)

葉がなくなり、降雨で水がまかなえるようになるため、特に水を与える必要はありません。ただ、厳寒期には凍結により容器が破損して、水が漏れることもあるので、確認は行いましょう。

 

(7) 施肥

 

ハスの肥料は、リン酸分を多く含む化成肥料や腐植質主体の肥料が適しています。油かすや身欠きニシンなどはチッソ分が多く花が咲きにくくなること、また、腐敗してウジ虫が発生することもあるので、施すのは避けましょう。

蓮の肥料
上段左から、イワシ、IB化成肥料
中段左から、煮干し、バイオゴールドオリジナル、まるやま3号
下段 身欠きニシン

※ニシン、煮干し、身欠きニシンは、チッソ分を多み、有機物が完熟していないため、花ハスの肥料としては適さない。


【元肥】・・・植え付け時に施す肥料

例1) 花蓮専用元肥(N:P:K-Mg=3:6:5-5)
5種類の肥料などを配合したものが、専用の元肥として販売されています。植え替え時に、規定量を用土に混入します。取り扱いは千葉中央肥料。

○施肥量は1.5g×容器のサイズ(L) [100L容器の場合、150g]

 

【追肥】・・・生育途中に施す肥料

例1) 花蓮専用追肥(N:P:K-Mg=4:4:4-5)

化成肥料に水溶性の硫酸苦土などを配合したものが、専用の追肥として販売されています。10日に1度、規定量を水中に投入します。取り扱いは千葉中央肥料。

○施肥量は0.2g×容器のサイズ(L) [100L容器の場合、20g]

 

【元肥、追肥の両方に適するもの】

例1)固形肥料まるやま3号(N:P:K-Mg=3:6:4-0)

元肥、追肥ともに、規定量を土中に埋め込むように施します。追肥は1ヶ月に1回。製造元は、日本林業肥料株式会社。

○施肥量は0.05個×容器のサイズ(L) [100L容器の場合、5個]・・元肥、追肥

 

例2)バイオゴールドオリジナル(N:P:K-Mg=5.5:6.5:3.5-0)

元肥、追肥ともに、規定量を土中に埋め込むように施します。追肥は1ヶ月に1回。製造元は株式会社タクト。

○施肥量は1.5g×容器のサイズ(L) [100L容器の場合、150g]・・・元肥

○施肥量は0.4g×容器のサイズ(L) [100L容器の場合、 40g]・・・追肥

※Nはチッソ、Pはリン酸、Kはカリウム、Mgはマグネウムの略(元素記号)

 

(8) 病害虫の防除

 

1 病気

a) 腐敗病

葉が萎れて枯れる、またはレンコンが腐敗する病気。特効薬はありません。6月中旬までなら、展開した葉1枚と剣(巻)葉1枚のついた地下茎を切り取り、清潔な用土で別の容器に植え替えます。展開した葉は水の蒸散を防ぐため、周位を切り取ります。生育の盛んな先端部に、腐敗病菌が少ないことを利用した株の更新による防除法です。

b) 斑点病

葉に茶褐色の小さな斑点が現れます。症状のでた葉は蔓延を防ぐため、早期に切除します。粉末のトップジンMを散布すると、完治は難しいものの、防除効果が得られます。

 

2 害虫

a) アブラムシ

新芽や蕾、雨のあたらない葉裏などに群がってつき、樹液を吸います。被害が大きくなると、花芽が枯れるなどの被害がでます。浸透移行性のオルトラン粒剤を水中に投入し、駆除します。

 

b) イモムシ類(ヨトウムシ、ナシケンモン、イラガなど)

葉を食害するので、見つけ次第、捕殺します。大量に発生した場合は、オルトランCなどのエアゾールタイプ(スプレー)の農薬で駆除します。浮き葉に大量の薬剤をかけると、撥水性を失い水没して枯れるため、散布には注意しましょう。

 

c) アカムシ

ユスリカの幼虫であるアカムシは、春~初夏にかけて発生し、浮き葉の葉肉を不規則な模様を描きながら食害します。発生が著しい場合は水を全て交換し、アカムシを排除します。また、メダカなどを飼育して捕食させるのも効果的な防除法です。ただし、メダカが飼育できる容器の大きさは45ℓ以上で、化成肥料や魚毒性の強い農薬は使用できなくなります。

 

d) ボウフラ(蚊の幼虫)

ハスへの直接的な影響はありませんが、成虫である蚊は人間の血を吸います。アカムシ同様、メダカを飼育するか、水を全て交換し、ボウフラを排除します。

 

(9) その他の管理

 

1 花殻つみ

花殻を放置すると実を結び株が衰弱するため、早めに花托を摘み取ります。また、散った花弁や雄しべが葉の上に落ちると、腐敗して葉が部分的に枯れるので、見つけ次第排除しましょう。

 

2 黄葉とり

生育期に黄色く変色した葉は、下から出てくる新芽を陰にするため、早めに摘みとります。ただし、8月中旬以降の葉は、レンコンに養分を供給する大切な器官であるため、枯れるまで残します。

 

3 藻の除去

多発すると新芽や花芽に絡みつき、葉が展開できない、または曲りの原因となります。殺藻剤もありますが、ハスに影響を及ぼす可能性があるため、使用は避けます。発生した藻は、手で丁寧に取り除きます。

 

4 除草

田土などに水田雑草の種子が混入していると、雑草が生えてくる場合があります。雑草を放置すると風通しが悪くなり、病害虫の発生源になるので、見つけ次第、取り除きます。また、ウキクサやアオウキクサが水面を覆うように多発する場合があります。それらの葉は、アブラムシの住処になるので、灌水時に水をあふれさせながら流すか、小型の網やザルなどを使い、除去します。

      作成者(Y)

 

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