巨椋池蓮品種

京 都  花 蓮 研 究 会

主な花蓮品種

 

■巨椋池品種(16品種)

■内田又夫氏作出品種(9品種)

■在来種等 (55品種)

 

花蓮ことはじめ

 

ハスは、ハス科ハス属に属する水生植物で、古来からの自生説と中国、インドからの来歴説があるが、現在は両方の種類が混在していると考えられている。

花期は6月下旬から8月中旬ごろまで、花はおおよそ4日間開閉を繰り返し、4日目には散ってしまう。花は2日目が一番きれいで香りがある。なお、2日目の花は午後には閉じることから、鑑賞は午前中が良く、できれば早朝、ミツバチが飛び交う時が一番良い。

 

品種区分

 

ハスの品種区分は定義付けされたものはなく、これまでの研究成果では、主な区分として、

■花弁の色により

白蓮(びゃくれん、しろばす)、爪紅(つまべに)、紅蓮(ぐれん、こうれん。桃色含む)、斑(まだら)、黄蓮(おうれん、きれん。黄白含む)、黄紅(きべに。黄白紅含む) の6種に大きく分けられる。

■花の大きさにより

大型(25cm以上)、中型(普通型、16~24cm)、小型(15cm以下)。

■花弁の枚数(10枚~数千枚)により

一重(25枚以下)、八重(50枚以上)、半八重(26~49枚)。
などがある。

 

■参考文献

 

■品種図鑑

北村文雄、阪本祐二著:『花蓮』(1972)講談社
渡辺達三著:『魅惑の花蓮』(1990)(社)日本公園緑地協会
内田又夫監修、金子明雄著:『花蓮百華』(2002)
王其超、張行言編著:『中国荷花品種図誌』(2004)中国林業出版社

■蓮全般

 阪本祐二著:『蓮』(1977)法政大学出版局
 『蓮の話』第1号(1996)~4号(1999)かど創房
 三浦功大著:『蓮への招待』(2004)西田書店
 『内田又夫選集 巨椋池の蓮』(2006)西田書店

■花蓮栽培

 榎本輝彦著:『花はす栽培』(2002)蓮蹊香園

 

■巨椋池品種(16品種)

 

【紅】巨椋の炎、巨椋大黒、佐古外屋敷、巨椋鳳凰、請所の本紅
【桃】黒坊の鬼紅、妙蓮寺、五丁田下ノ段、国道24号、にぎりめし
【白】巨椋の白鳥、巨椋宮西、小倉西
【爪紅】巨椋の輝、巨椋の曙
【斑】巨椋斑

巨椋の炎

O-1 巨椋の炎(おぐらのほのお)

紅一重中型有条。巨椋池系品種の中では一番濃い紅色で目を引く、それが品種名の由来ともなっている。つぼみは先端が丸いも特徴で、ふっくらとした円錐形である。先端の丸いことが、時折炎のように弁先がねじれる花を生じさせる。

巨椋大黒

O-2 巨椋大黒(おぐらだいこく)

紅一重中型有条。品種名は地名に由来。京都市伏見区向島大黒町地内、宇治川大橋南で内田又夫氏が採取。濃い紅色、弁先は更に濃い爪紅。花立ちはよい。

佐古外屋敷

O-3 佐古外屋敷 (さこそとやしき)

桃一重大型有条。巨椋池系品種。品種名は地名である。近くに延喜式記載の「狭山江御厨」跡があったと考えられており、当時の養魚池に生育していたものと推測されている。これら巨椋池の蓮と形質が類似している蓮葉など約1万2千万年前の化石が近傍から発見されている。

巨椋の鳳凰

O-4 巨椋の鳳凰(おぐらのほうおう)

紅一重大型有条。花は濃い紅色であり、花托も紅を帯びる。満開時には、水平近くまで開く。「巨・濃紅一重 原始蓮?」とされていたもの。

請所の本紅

O-5 請所の本紅 (うけしょのほんべに)

紅八重大型有条。品種名は地名に由来。昭和45年頃内田又夫氏が、宇治市北遊田請所の水田で発見した実から育成したもの。巨椋池地域は大正期頃蓮根栽培とともに、京阪神向けのお盆用の花蓮も栽培されており、本種も花蓮用品種とみられる。つぼみの時から、緑色地に濃い桃色の花弁で、開花しても茶碗型で丸弁有条の八重咲きで、最後までほぼ茶碗型を保ち、花弁は中心部の花托を包み散乱しない。

黒坊の鬼紅

O-6 黒坊の鬼紅 (こくぼうのおにべに)

桃一重大型有条。品種名は地名に由来。巨椋池北部、京都市黒坊で古くから生育していたもので、当時の漁師が呼称していたという。花は淡い桃色の中花で、花弁の先端部は濃い桃色となる。少し細長い先尖りの花弁がねじれ状となり、寺院の鬼瓦に似ていることから「鬼紅」となった。京都市伏見区矢倉島の堀井長次郎氏がレンコン用として導入したとの説もある。

妙蓮寺

O-7 妙蓮寺 (みょうれんじ)

桃一重中型無条。品種名は地名に由来。昭和53年ごろほ場整備後の久御山町島田妙蓮寺付近で内田又夫氏が採取したものである。明治の始め木津川堤防が決壊(正徳2年、1711年妙蓮寺切れ)したが、その後池ができ、そこの蓮の種子がほ場整備に伴い発芽したものでないかとみられている。つぼみの時から光沢のある桃色で、開花すれば一層光沢のある桃色となる。

五丁田下

O-8 五丁田下 (ごちょうだしも)

桃一重大型有条。品種名は地名の通称に由来。久御山町市田西観世地内の地元で通称「五町歩ある地域」として五丁田といわれ、その南側で内田又夫氏が採取したもの。花は美しい淡桃色で、弁先が一層濃い桃色で有条。

国道24号

O-9 国道24号 (こくどうにじゅうよんごう)

桃一重大型無条。品種名は採取場所を表示していたが、そのままとなった。宇治市槇島町千足、京都文教大学の南西で内田又夫氏が採取。つぼみの時は桃のように美しく、淡い桃色種として代表的なもの。

にぎりめし

O-10 にぎりめし (にぎりめし)

桃一重中型無条。品種名は通称に由来。久御山町百間切地内で採取。「にぎりめし」とは採取場所の上空から見た形がにぎりめしに似ていることから付けられた。花弁全体が淡桃色で弁先が若干濃い。

巨椋の白鳥

O-11 巨椋の白鳥 (おぐらのはくちょう)

白一重大型。京都市伏見区向島西定請にある府立商業高等学校(現府立京都すばる高等学校)の東側で内田又夫氏が採取し、「商校東」などとしていたものを花容から平成13年「巨椋の白鳥」と命名。花弁が大きく、花托上面は濃緑で、内弁数枚が内側に曲がり、まさしく白鳥が飛び立つ様である。

巨椋宮西

O-12 巨椋宮西 (おぐらみやにし)

白一重大型。品種名は地名に由来。久御山町大字森小字宮西地内で、内田又夫氏が採取。白色の単弁花で花弁が広い。

小倉西

O-13 小倉西 (おぐらにし)

白一重中型。昭和46年宇治市小倉の西方で幼芽を採取。開花時は花弁の先に緑色部が残り、さわやかな感じを受ける。開花度は大きく、花弁が水平より下がる。

巨椋の輝

O-14 巨椋の輝 (おぐらのかがやき)

爪紅一重大型。昭和46年ごろ内田又夫氏が京都市二本柳の水田で発芽した幼芽を採取し、育成したもの。花は白黄色地に淡い桃色の条線が入る。丸弁型で、花弁の先端が少し桃色を帯びる爪紅タイプ。花弁の内側底部にも淡桃色のぼかし模様が入り最後まで退色しない点は、他の園芸種にない花容で品があり美しい。

巨椋の曙

O-15 巨椋の曙 (おぐらのあけぼの)

爪紅一重大型。京都市の南に広がる巨椋池干拓田で採取されたもの。 開花1日目は白緑色であるが、淡い桃色がかかり、桃色の蓮と見間違う程で、2日目は弁先だけが淡桃色で、全体は白色であるため白蓮と間違えそうである。3日目はさらに退色し白花となることから、見る花や時間によって花色が変化するため、当時の巨椋池の漁師仲間では「キツネ」と呼ばれた品種。

巨椋斑

O-16 巨椋斑 (おぐらまだら)

斑一重大型、斑は少ないタイプ。昭和初期に京都の巨椋池で採取されたものが京都伏見の西運寺に奉納されていたもので、干拓される前に採取された唯一のもの。

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